紅茶の詰った宝箱 第2話

銀のトレイと氷河鼠の毛皮

銀河鉄道で有名な宮沢賢治の「氷河鼠(ひょうねずみ)の毛皮」という話がある。その中でイーハトーヴの住人が紅茶を所望すると、銀のトレイにカップを載せ紅茶をサーブしてくれる。どんなトレイだったのだろう、イギリスらしく古びた年代物のトレイだったのかもしれぬ。

湘南エリアには、住宅街にある小さな個人経営の紅茶屋さんが多い。
その中には道具にもこだわりをもった店主の営むカフェもある。
クリームティを提供するこの店は、イギリス式の紅茶サーブにこだわった店だ。
その日は、海岸沿いのドライブカフェに行こうと住宅街を歩いていた。
ふと右手を見るとクリームティとの張り紙。文字につられて、細い路地にはいると
普通の民家に看板が見えたので入ろうとしたが、入ってよいのかわからない。開いた玄関から廊下が見えたのでおそるおそる靴を脱いで上がって奥に進んでみた。奥のドアを開けてこんにちはと声をかけるとご亭主がいらっしゃった。靴を脱いでいるのを見て「そのまま土足でよいのですよ」。 いやはや小さい張り紙があったのを見過ごしていた。
洋風のリビングのたたずまい。クリームティを頼もうとしたが、あいにくスコーンが売り切れ。がっかりしていると、せっかくいらしたのだからとお菓子も添えてサーブしていただきました。ご主人の趣味のジャズなどのレコードがありレコードプレーヤー。「なにかお聞きになりますか?」レコードですか・・・風情がありますね・・・と、 えっ、ベルトドライブ方式のプレーヤー?! え、現役? とチョーおどろき。「パーツがなくなったら終わりです」レコードファンの人がいたらそっち目当てでくるでしょうね。
かけてもらうと静かな居間の空間がアナログの生っぽい音で満たされます。
紅茶は、豪華なピカピカの銀トレイに銀ポットなどの銀食器でやってきました。ご主人のコレクションでサーブしていただく、優雅なイギリスの田舎のAFTERNOON TEAといった感じです。
これが真冬の北風が吹く季節でガタガタ窓がなっていれば、「氷河鼠の毛皮」の世界観を彷彿させる情景だなあ。プラネタリウムの「銀河鉄道の夜」聞きながらお茶をしたら最高。
列車には乗ってないけど。

紅茶豆知識
earl grey

【アールグレイ】
ベルガモットを使う柑橘系の香り付け紅茶で、フレーバードティーでは著名なブレンド。
人工の香料をつかった安いものもあるが、天然のイタリアのカラブリア地方で栽培されるベルガモットを使った香り豊かなものをぜひ飲んでほしい。
使用する茶葉は、今日ではインドのダージリンやアッサムかセイロンの茶葉を使用したものが主流。もともとは、映画「Phantom Thread」でデザイナーの主人公がこだわったスモーキーなラプサンスーチョン、キームンといった中国茶葉とブレンドされていた。
イギリスなどではストレートで飲む認識があるようだが、ミルクティーにしてまろやかな味を楽しむ指向もアリだと個人的には思う。
柑橘系なので、アイスティにしても合う紅茶です。