宝石と宝玉の宝箱 第1話

1月の(柘榴)ザクロ

木石留依は中学の頃は友達からよく「トメ」、「トメちゃん」と呼ばれた。
周りの子が漢字の一文字目を見て、“うちのおばあちゃんと同じ“、とからかったのが最初で、いつしか本名のルイでなくみんなそう呼ぶようになった。
母の依子は“お母さんの実家の家紋はザクロの紋やったんよ。いまはみんな亡くなってしもて、だあれもいないんで使う人はいなくなってしまったけど。なんか残したかったんよ。実家のザクロの木はなくなってしもたけど。”
以前、ぽつりと母が漏らしたことだ。
それまでは、“あんたは1月うまれやから誕生石のガーネットと私の名前からとった”、なんて聞かされていたけどね。

私の家は、横浜で小さな宝石商をしている。だから小さい時からいろいろな石は見てきた。
私の1月生まれ。誕生石は、ガーネット。和名は柘榴石。ガーネットってとっても種類が多い石で大別するとAl(アルミニウム)系とCa(カルシウム)系に分かれる。
誕生石の由来になったAl系は赤やオレンジ、紫系。対するCa系は、緑系の色が多い。
古代エジプトではファラオの赤い石はガーネットだったと言われる。
石屋のトメちゃんだった私は、自然と石に詳しくなって周りから相談を受けるようになっていた。
いわゆる“パワーストーン“のことや“彼とうまくいく恋愛にきく石は何“といった事から”占い“まで。
なんか宝石商とパワーストーン屋を勘違いしている人がやたらと多い。
宝石とパワーストーンの業界は基本別の業界だ。
宝石は基本ブランド品だ。美しさや希少性が価値につながる。高価で投機にもなる。パワーストーンは、エネルギーというほんとかウソかわからないものを対象としている。宝石として扱われるものもあるが、それ以外の石の方が圧倒的に多くある。
三大パワーストーンと言われる、スギライト、チャロアイト、ラリマーなんてホント模様石で透明なクリスタルな宝石とは別の世界の石だ。
誕生月で石を選ぶときパワーストーンとしての意味を考える人もいるが、恋愛運、仕事運、金運といった目的でパワーストーンを選ぶ方が多いだろう。

「トメちゃん、今度アクセサリー買いたいから浅草橋まで付き合って。」
学校の帰りに若宮花から声をかけられた。花は私と同じシワシワネーム仲間だ。でも最近の若手女優に同じハナという名なの子もいるし、ダンスも習っていてクラスの子に人気がある。同じシワシワな呼び方の私とは違うのだ。

「石屋の子に商売敵の店についていけなんて、いい度胸じゃん。」
「だってトメちゃんの店高くて私には分不相応だから」
「わかった。マックでゆるす。でどんなのが欲しいの?」
「わたし緑色の石が好きだから、そんな色のピアスやネックレスがいいな。
エメラルドなんて高くて買えないからそれ以外で。」
「エメラルドでも宝石クラスでなければ手ごろな値段であるけれどね。

そうね、ペリドットみたいな薄緑な色も考えたけど、エメラルドを出してくるくらいだからもっと濃い緑色がいいのね。」
「白に映える緑がいいわ。」
今度小さな舞台で行われるコンテストで白い衣装を着るらしく、はっきりした緑のアクセサリーを身に着けたいらしい。
「だったら、ガーネットから探すのもいいかも」
「え、ガーネットって赤い色でしょ?」
「ガーネットでもグロシュラーと呼ばれる緑の石があるのよ。エメラルドグリーンなものもあるから
探せば、ピアスに仕立てられるものも見つかるかも。」

浅草橋の裏通り、ひっそりとたたずむ神社に先にお参りにいく。
「トメちゃん、結構信心深いのね。うちのおばあちゃんみたい。」
「わたしが、ルイなの忘れてない? インバウンドで日本にきている神社好きなフランス人みたいに宗教には敏感なの。」
「それじゃ観光できてる外国人みたいじゃん。やっぱり、宝石商よりパワーストーンショップの店長が似合ってるよ 笑。」
「石って出会いなのよ。出会いを祈るは結構ガチよ。」
神様今日はいい買い物できますように・・・ この辺りにはいっぱいあるストーンショップへ向かうのであった。

数時間後:
「あーいっぱい歩いたね。」
浅草橋には、マックがないのでモスバーガーに入ってお茶していた。
テーブルの上には、かわいい小さな緑の石が3つつながったピアスとおそろいの色をした石の周りを透明な細かい石で縁取ったネックレスがあった。
「よかったね。グリーンガーネットだよ。情熱と勝利を意味する石。きっと今度のダンスコンテストはうまくいくわ。」
「ありがとう。留依。これで私もっとがんばれる。5月生まれの私には誕生石でないのがちょっと残念だけど。」
留依はちょっと考えてからこう言った。

「ねえ、花。石には誕生日石っていうものもあるの。あなたの誕生日”5月30日”の誕生石は、実はグリーンガーネットなのよ。つまりこのアクセサリーはあなたのバースデーストーンってわけ。」
花は、大きな目をもっとまるくして留依を見つめた。
「だから、あなた緑の石がいいっていったときグリーンガーネットを探しましょうっていったの?」
留依は何もいわず、花の手を握って微笑んだ。花もただ嬉しそうに手を握り返した。
誕生日をしっかり覚えていてくれた親友の手を。
「自分は石屋の子であって、パワーストーンのジュエリーショップの店員じゃない。石に神秘を求めたり霊験を求めるのは少し違う」、とこんな話は普段はしてくれないこの子だが、石は大好きなんだ。
心の中が幸せで満たされていくのを花は感じた。
「やっぱり、ルイは石に愛されている。この子と友達でよかった。」

― きっと今度のコンテストはうまくいく。

誕生日石

【誕生月石】
ここでは、登場する1月と5月に関して例示
1月 誕生石 ガーネット 1月 誕生守護石 オニキス
5月 誕生石 エメラルド ヒスイ 5月 誕生守護石 マラカイト

各誕生月に対応する石が選定されているのはよく知られてます。
その月毎に「誕生守護石」も対で存在します。
さらには、誕生日ごとにも対応する石を選んだものがあります。
【出展】366日の誕生石
https://differencee-jewel.com/daily-birthstone/

因みに星座の石もあって、登場人物の若宮花(ふたご座)の星座石には”アゲート”、”ブルーレース”、”ラリマー”などがあります。